メガロボクス感想(ネタバレあり)

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megalobox.com

 

 毎週の密かな楽しみだったメガロボクス見終えました。というわけで感想。

 

 

 

 

 まず総評としては、「思ってたより“かなり”良かった」です。俺自身は「あしたのジョー」世代ではないものの、アニマックス漬けだった幼少期を過ごしたおかげであらかたのストーリーは知ってるつもりです。

 

 なので、力石を意識したであろう勇利のデザインとか、南部のおっちゃんの「立て、立つんだジョー!」とかかなりニヤニヤポイントだったりしたわけですけど、全体として見れば「あしたのジョー」を演出、作画ともにリスペクトしつつ、現代風の解釈を加えた、いわば「新訳あしたのジョー」であると言える出来には満足しました。

 

 全体としては好印象だったものの、不満がなかったかと言えば嘘ではなく。具体的に言うと、いくらチャンピオンである勇利が嫉妬するほどの才能があるとはいえ勝ちすぎというか、そもそも嫉妬するほどの才能があるのだろうか?と思えるくらい目立った強さの描写がないまま勝ち上がってしまい、いくら展開上必要だとは言えもうちょっと上手く描写できなかったのかなと思わざるを得なかったですね。少年漫画じゃないけど、何か特訓して覚醒するシーンであったり、試合の中で一皮むけるシーンがあっても良かったと思う。Gガンダムの明鏡止水みたいな、明確に「あっこいつ強くなった」と伝わるシーンがあればまだ決勝まで勝ち抜けたことに納得いったんですけどね)

 

 ましてやギアという、いわば武器を放棄した状態で戦う“ギアレス”ジョー。それが下位ランクを勝ち抜くだけならまだしも、上位ランクすら倒してしまうということは「ギア付けてる方が弱いってどうなの?」「上位ランカー弱すぎねえか?」という疑問を抱くとともに、ギアという武器をウリにしている白都グループはジョーという存在を何としてでも抹消しなければ商売に差し支えてしまうにも関わらず意外と寛容だしで、そもそもメガロボクスという競技である必要性に疑問を抱かずにはいれなかったです。

 

 最終的に勇利がギアを放棄して生身対生身の、メガロボクスならぬボクシングを始めるシーンは見ている側にとってはかなり“アツい”シーンではあったんだけど、肝心の決勝戦でギアが使われなかったらそれをウリにしてた白都コンツェルンからしたらたまったもんじゃない。軍事転用の商談のシーンで「性能は証明した」みたいな事言ってたけど、いやむしろ不要性を証明しただけなんじゃないのか・・・?

 

 加えて、試合中の心理描写は比較的充実していたように思えるものの、それでも南部贋作というハッタリのプロが“ハッタリ”をほとんど使わないまま勝ち上がってしまい、南部贋作というキャラクターならびにそれを取り巻く藤巻といったアンダーグラウンドの部分が中弛みの要因になってしまったようにも思える。キャラとしてはかなり良かったんですけどね。ハッタリのプロを名乗るならもっと裏方としての活躍をして欲しかったなぁと。

 

 そういった点で、脚本的にはかなり無理があるというか、そもそも根底から考え直した方が良いんじゃないかと感じる部分も多くあるものの、ストーリーは王道、昭和チックで男臭い作風でありながらも現代アニメテイストの作画でなかなか良かったし、そういう細かい矛盾や疑問は良いんだよ!と押し通すだけの力を持ったアニメであったことは間違いないので、面白いと言える作品でした。

 

 

 

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 あと、個人的に良いなと思ったのがこのシーン。南部贋作ことおっちゃんがドッグレースで毎回買っては外している馬券ならぬ犬券なんですけど、カーペディエムの意味は「一日を摘め」。つまり、「今日を生きろ」という意味なんですってね。

 

 これが「あしたのジョー」に対する「きょうのジョー」、つまりこのメガロボクスという作品としての姿勢なのだと思い、リスペクトをしつつも現代風にアレンジした別の作品なんだなと思いました。

 

 

 

f:id:ki4do3ai2raku:20180705013718j:plain ただ、やっぱこのシーンは蛇足だったと思うんですよね。最後の白都ゆき子の呟くシーン、俺は「ありがとう」だと思ってましたし、白都の為に今まで己を殺して戦ってきてくれた勇利に対してのありがとうなんだろうけど、勇利のいちファンでもあったゆき子の「勝ってくれてありがとう」かもしれんと思いながら見ていて、試合の結末は視聴者にお任せするスタンス嫌いじゃなくってよと思ってたら最後の最後にこれが出されてちょっとゲンナリ

 

 いやだから勝ちすぎなんですって。明らかに無理があったでしょ。いくら才能があっても。地下ボクシングで相手も弱く設備もないような場所でずっと才能を腐らせてきたジョーが、最先端のトレーニングをこなし強い相手と戦って鍛えてきた勇利に勝っちゃうってのは、いくら勇利がギアを外したことで体力と筋力が低下したとしてもやっぱりあって欲しくなかった。それは白都樹生しかり、グレン・バロウズしかり。トップランカー相手に勝つという結果を残そうと思ったら決死の覚悟だけじゃやっぱり足りなくて、ましてやギアレスというハンデを背負っての戦いだからこそ“ハッタリのプロ”である南部贋作というキャラが必要なんだろうと思ってたらそうでもなく、その辺りがちょっとというかかなりガッカリした部分であったわけです。

 

 とはいえ先述したように、そういう細かいことは良いんだよと有無を言わせぬ力強いストーリー描写も多く、ストーリーもクソもないようなオタクに媚を売るアニメばかりの今日にこれだけ骨太なアニメを作ってくれたことは賞賛に値するし、良いアニメだったと思う。

 

 あとOPはあんまり好きじゃなかったけどEDはかなり好みでした。おわり。

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